ここでは基本的なオフェンスの動きを取り上げます。

4.カッティング

 ディスクをレシーブすることは,投げるのと同じくらい重要な技術である。どこにどのタイミングでカットするのか,それがわかるとアルティメットはよりおもしろくなってくる。
 カットの技術はこれまでほとんど個人の能力の問題によると思われていてあまり教えられてこなかったように思うが,ここではそれを誰にでもできる形にして基本的なカットの技術を紹介したい。これは非常に重要なテクニックでカッティングができればどんなチームに対しても通用するプレーヤーになれる。

カッティングとは

 パスをもらうためには,自分についているマークをふりきらなければいけない。たとえば相手が自分より足が遅くまったく抜くのに苦労しないと思った場合,強引に抜いてオープンでもらうことができるかもしれない。カットをしなくてもパスを受けることができるわけである。
 しかし、相手の足がたとえ遅かったとしてもわずか20−30mほどの距離で大きく差がでることは少ない。スローの精度が低かったり,パスのタイミングが遅かったりするとブロックされる可能性も高くなる。しかも,カットしないでもらえたとしても自分のもらいたいところでもらえる可能性は低い。相手は一番危険なエリアをケアしてディフェンスしているはずだからそこに走らせまいとしているだろうし、よほどのボンクラ君でない限り距離を保ってそのエリアをケアしているはずである。足で勝負する場合もらえる方向にまっすぎ走ってしまい,それは結局パスをもらえたとしても望んだ位置ではないかもしれない。


 カッティングとは,自分がもらいたいエリアでパスをもらうための相手との駆け引きでありその相手を振りきるスキルのことである。
自分がもらいたいエリアとは,よりアップフィールドでパスをもらうことであり,一番の形はエンドゾーンでパスをもらうことである。それができない場合でも十分なゲインをしてパスをもらうのが優秀なレシーバーである。
この中には,ポジショニング,マークの相手との駆け引き,味方とのコミュニケーション,カット技術が含まれる。


ポジショニング

パスを受ける前に一番重要なのはポジショニングである。ディスクがまだ低い位置にある時点でエンドゾーン近くにポジションをとっても点をとることは難しい。ディスクの位置に応じて最適のポジションをとる必要がある。
最適のポジションとは常に2方向以上の選択肢があるポジションのことで,縦方向ならミートか奥,横ならオープンかブレークサイド(裏)かということになる。相手は常にゴールをとられないことを考えているわけで,その点から,縦方向がより相手を揺さぶるのに効果的である。スペースも大きい。
figure1は2on2の状況だが,レシーバーのポジションが深すぎてスペースがない。ミートだけを完全にケアされてしまっている。
figure2をみると,奥に大きなスペースがあり,Dはロングを一番に守る必要がある。するとフェイクなしでミートパスをもらえるかもしれないし,ミートにフェイクすると相手は奥をケアしているのでダッシュでついてくるかもしれない。するとカットして奥へ抜けることができる。相手がケアしている方向がわかれば優位に進められる。
ミートを実際にもらうのかフェイクにするかは相手との距離による。相手との距離が近くタイトについている場合は小さく速いフェイクで釣っておいて一気に奥に走る。時には小さいフェイクを2、3回入れて相手の足を止めてしまうような方法でもよい。


マークの相手との駆け引き

それでは,figure2の位置にいればベストポジションだろうか。このポジションに最初から立っている場合,相手は動きを注意して見られるし動きを予測しやすい。セットしてディスクインの状態でこの位置にいることは問題がないが,figure3のような流れがあるときは動きの中でポジショニングをとるのがより効果的である。
figure3では,フォースミドルを想定しているが,1から2へスイングパスが一本でている。このときディスクが流れている間にレシーバー3は最適のポジションBに走り込むよう少し奥のフェイクを入れながらタイミングを合わせて2がディスクをキャッチするタイミングに合わせる。
2がディスクを持った瞬間3はダッシュでブレークサイドAを狙った角度でBに入る。ディフェンスはAに走り込まれるのを防ぐため前に入ろうとしてかぶってくるので,その瞬間に奥にカットしエンドゾーンCに向かって走る。これで1点。


カットの技術

難しいタイミングだが,2がディスクを取ってバックハンドで振り返った瞬間に一歩前に踏み込むようなイメージでカットをすること。そしてこのタイミングにBのエリアに入っていること。そうすればかなり高い確率で相手を振りきることができる。大きく踏み込むようなイメージを持つこと。Aに向かって走るスピードが速すぎるとカットが踏めないので大きくカットを踏めるスピード(つまり急な角度でカットを踏めるということ)で入ってくること。だが、ここでAに走るのがフェイクだと思われたら相手も同じようにスピードを緩めるのでだいたい80%くらいの力で走るのがいいと思う。
感覚としては,figure4の1のところが80%,2が100%の力で一気に相手を振りきり、3でリラックスして90%の力でスピードに乗りディスクの落下点に合わせてポジションを修正する。カットした瞬間に振り返り(この場合はサイドのロングをイメージしてカットを踏んでいるので右に振り返る)スローワーが自分のイメージ通りにロングを投げてきたか確認する。あとはポジションを若干修正しながら落下点を予測してダッシュする。ひんぱんに振り返るとスピードが落ちるので最初の一瞬でだいたいの位置を把握すること。ここでスローワーが投げていなかったら,もう一度急角度にミートをする(figure5)かスローワーを罵る。


味方とのコミュニケーション

スローワーの力によって当然走れるレンジがかわってくるのでそれに合わせて若干ポジションを修正してやること。カットのポジションを前後に少しずらす。
またレシーバーの中には,ディフェンスを意識するあまり必要以上のフェイクをする人がいるが,不要なフェイクはスローワーの投げるタイミングを遅らせることにつながるし,ミスコミュニケーションを生みやすい。自分の一番自信のある形でカットを踏んだらあとは一気に走り抜けることだ。スローワーはレシーバーがカットした瞬間にスローのモーションに入っていること,このタイミングでリリースすればディフェンスは追いつくことは困難だ。
日本とアメリカのプレーの違いとして,スローワーの投げるタイミングが挙げられる。アメリカはとにかく早いタイミングでリリースする。カットを踏んだ瞬間には矢のようなスローが頭上に飛んできている,そんな感じ。このタイミングはディフェンスにとって脅威である。カットをした瞬間がもっとも相手とのスピードの差がでている瞬間であり(時にはディフェンダーは逆を走っている可能性もある)足で勝負する前にパスが通ってしまうのである。味方と息が合わないとこのプレーはなかなか難しい。だがこれが理想のプレーだと思ってトライすれば息はだんだん合ってくると思う。
アメリカがアイソレーションをする理由もそこにあると思う。抜けていてもその瞬間をみていなければパスを通るのは難しい。アイソならスローワーは最初の5秒間はレシーバー一人の動きに注意していればいい。

 このへんを意識してできればいいカットをできるようになるでしょう。これはカットの一番基本的な例になります。多くのアメリカのチームがアイソレーションをするのはもっともシンプルなこの形を作ろうとするからで、逆に言えばわかっていてもこの動きをするともらえてしまうということ。最強のカッティングである。
ラダードリルを練習に取り入れているチームは,この動きを意識しながらやらないとはっきり言ってなんの意味もない。常に相手を想定してやること。

カッティングの基本的な内容は以上の通り。このほかトラップのとき、エンドゾーン,ハンドラーのカットなどがあるけれど,また今度。基本は同じ。スペースを作る,タイミングを調整する。


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